レーシック激安競争、神奈川クリニックvs品川美容外科、

漁夫の利を得たのは、湘南美容外科(SBCグループ)1

2010/06/17

 凡そ10年程前から始まった「レーシック」(角膜屈折矯正手術)は、一般的には視力回復手術として認知されている。仕事柄、必要に迫られ手術を受けた芸能人やアスリートが「視力が回復した」と宣伝したことで、瞬く間にレーシック市場は広がっていった。

 ただし、市場に参入したのは既存の眼科専門医ではなく、潤沢な資金を有する大手美容外科が主流であった。美容外科にとって営業の主力でもあった脱毛が、エステ業者に顧客を奪われていたところに、魅力ある保険適用外(自由診療科目)のレーシックが登場したことで、我先に飛び付いたのも当然の成り行きといえる。

 当時、業界大手「神奈川クリニック」の山子大助も、このレーシックを金脈であると捉え、東京・大阪・名古屋に次々とレーシック専門院を開院した。時おなじくして「品川美容外科」も同様にレーシックを手掛けるようになり、後に業界最大手といわれるまでになった。

 そもそも、手術時間は10〜15分程度であり、患者を数多く捌くにはもってこいの手術である。ある程度の手術回数をこなし錬度を上げれば、ヒヨッコ医師でも十分に戦力になる。それでいて、数十万円の請求が出来るのだから、カネに卑しい俗物医師がほっとく訳がない。

 結果、レーシック専門院が巷に増殖したのである。そうなると、クリニック間での顧客奪い合いが過熱していくのは、火を見るより明らかだ。アイドルやプロ野球選手といった有名人を広告塔に起用した宣伝行為に手術費用の値下げ競争と、生き残りをかけたレーシック戦争の勃発である。

 その最大の争いが、神奈川クリニックと品川美容外科の頂上決戦であった。現在、レーシックの手術費用の相場は10万円を切るまでになった。当初50万円以上したことをおもえば、デフレの典型的事例といえ、両者の際限なき値下げ競争が招いた結果といえる。

 折角の稼ぎネタを潰したに等しい両者の争いを、他の医師等は苦々しい思いで眺めていたに違いない。ところが、散々ごちゃごちゃにかき回した神奈川クリニックと品川美容外科の争いの先には、勝者は存在していなかった。寧ろ、双方が致命傷を受ける敗者となったのである。

 値下げ競争による収益悪化、過剰な広告費用による負担増といったことは当然だが、それ以上のシッペ返しを喰らうことになる。昨年8月、過熱する両者の宣伝行為に業を煮やした公正取引委員会が、警告を発したのである。

 その様を、薄ら笑いを浮かべ眺めていたのが「湘南美容外科」(SBCグループ)だ。

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