2012/03/17
日本の食卓には欠かせない食材の一つ豚肉。ハムやソーセージといった加工品も含めれば、その消費量は牛肉や鶏肉を大きく上回る。
その豚肉に於いて、取り分けて輸入豚肉を扱う業界に激震が起きている。関税法違反や脱税で、次々と卸会社やブローカーが逮捕されているのだ。背景には、輸出入関税の撤廃を柱とするTPPへの参加を模索する、野田政権の思惑が絡んでいると実しやかに囁かれている。
「脱税の温床となる差額関税制度は不必要」、とする気運が世間で高まれば、関税制度全般への非難と相俟って、おのずとTPP参加の理解が深まると考えているのだろうか。こういった姑息な絵図を描くのは、官僚が最も得意とするところである。
さて、TPP参加の突破口として標的にされた感が否めない差額関税制度であるが、同制度のみの存続を問うのであれば、やはり廃止が妥当であると言わざるを得ない。この際だから、徹底的に洗い出して頂きたいものだ。ただし忘れてならないのは、差額関税を免れて国内に流入した所謂「裏ポーク」で大儲けしている輩が、輸入業者やブローカーだけではないということだ。
安価な豚肉を原料とする食肉加工の大手企業などは、この裏ポークに依存しているのが現実だ。過去にも、日本ハムや伊藤ハムといったハム・ソーセージの代表的企業が、裏ポーク絡みで摘発されている。更に、関税法違反の危ない橋を渡ることなく、裏ポークの流通のみに暗躍する業者の存在は見逃せない。一般的な輸入業者やブローカーは、買付資金を常に用意している訳ではない。
売却益を次の買付資金にまわすサイクルのなか、市場供給の都合で商品がだぶつく事も間々ある。自己資金が潤沢でない業者は、常々資金ショートに見舞われる危険に晒されているのだ。輸入豚肉の売買を繰り返してこそのシノギである以上、保管料も嵩む冷凍倉庫に輸入豚肉を眠らすことは、業者にとっては死活問題なのである。
それらの足元を見て、豚肉を廉価で買い叩く、或いは豚肉を担保に銭を貸付ては、質流れと同様の扱いで豚肉を売却する。この手の商売を専門に行なっているのが、裏ポーク商人と呼ばれる飯島健二(飯島商店=茨城)なのである。
更に、裏ポークには元より怪しげな資金が流入している事もあり、詐欺や収奪といった事件性を帯びている場合が多い。本来ならば躊躇すべき商いなのだが、飯島健二にとっては、日常的なビジネスなのであろう。なんとも逞しい商魂である。
敬天新聞社
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吉永 健一