(敬天新聞4月号)
若かりし頃、あの田中角栄元総理に「乱世の小沢」と呼ばれていたのが、今を時めく小沢一郎である。小沢一郎がゼネコン関係から金を貰っている位、誰でもYESと思っている。
田中金脈の王道を歩んだ人間だ。北朝鮮からでさえ謝礼を貰ったと噂された、あの金丸信の後継者ではないか。驚くに値しない。
西松が評判悪いのは分るが、談合、裏金、献金とどの分野を取っても大手ゼネコンに比べたら可愛いものだ。ただ西松の場合、国内だけでなく外国を絡めて裏金を作り、それを国内に持ち込んでいた悪質さが問われた。
そんな中で断トツの献金を受けていたのが小沢一郎だった。西松の関係者が自供したのなら秘書が逮捕されても仕方あるまい。
日本人の場合、政治家が隠れて企業から金を貰ってるのは認めているような所もあるし、力がある人の所に多く集まるのは仕方ないと思っている節もある。今の時代に合うか合わないかは別にして、選挙民は清濁併せ呑む政治家を立派だと思っている。余裕がある人は国家の大計を考えるが、日々の生活に追われている人は現実の利害を求める。
中央官庁の背任のような無駄使い、必要のない外郭団体、天下り、それを追及出来ない政治家、公共工事の見返り利益を求めて競い合う族議員。そういう自民党政治に国民からレッドカードが出ているのだ。
戦後をリードして来た政党としては、概ね及第点をあげられた自民党だったが、ここに来て完全に制度的にも人的にも底が見えた。自民党だけならまだしも宗教政党である公明党の力を借りている為、時折、ミエミエの創価学会の意見を取り入れている。
勿論、民主党が国民の満足するような政治を直ぐに実行出来るとは思っていない。マニフェストが空手形になる事もあるだろうし、外交的な物では矛盾だらけの事もある。
それでも流れない水が腐って蚊や蚋が発生した状況から抜け出し、澄んだ清い水に笹舟を浮かべてサラサラと流れる小川を取り戻したい、と国民は願っているのだ。
その後、二度三度再編合併を繰り返しながら、近い将来二大政党になって行くだろう。白黒をハッキリ表現出来ない日本人の場合、穏やかな多党制の方が合っているのかなー、と思っていたけど多党制と言っても一党独裁に近い政治になる訳だから、長い権力は癒着や利権の温床に繋がる。
二大政党の場合、選挙の度、野党に入れれば結果的に政権は常に入れ替わる理屈になる。まあ、いい政治をする党になったら何期でも支援すればいい。
それは兎も角、小沢一郎の錬金術など国民は合点承知の助である。金丸信の五億円献金事件の時も証人喚問を受けた事があるし、二年前に事務所費疑惑が浮上し、自身の資金管理団体が十億以上の不動産を所有している事で大騒ぎになったばかりだった。こんな男の秘書が今更政治資金規正法で逮捕されたからといって驚くには値しない。
小沢自身、何で俺だけが、何で今なんだ、という気持ちはあるだろう。だけど証拠も無く捕まる訳じゃないから本人の検察批判は相手をムキにさせるだけで得策ではない。
国家権力体制側の一角を成す逮捕権を持つ機関なだけに、政党全体で戦えばまだしも最大野党の党主と言えども個人的案件ではどう見ても不利だろう。
あの田中角栄でさえ負けた歴史がある。その証拠に西松に留まらず、他のゼネコンの調査を始め、小沢不利説を盛んにリークしている。公共工事では常に談合を繰り返しているゼネコン業界だからいつでも表に出せる「犯罪」は持っている。
その情報を検察に出すのか、小沢の為に出さないのか。自民党が確実に勝つなら検察の呼びかけに応じてもいい。だが民主党が勝つようならド痛いしっぺ返しが待っているだろう。その綱引きの渦中にあるのではないか。
普段なら逮捕された秘書が起訴された時点で小沢の負け、という印象が強い。だが今回は漆間の馬鹿発言があった為に片手落ち捜査、不平等捜査に見えてしまった。
検察に対して、もう一つ国民が何故?と思っている案件がある。キャノン工場建設に絡む、コンサルタント会社社長の脱税事件で脱税の裏金を渡した鹿島の関係者が一人も逮捕されていないのだ。
何故、鹿島がキャノンの工場建設の仕事を取るのにキャノンに関係ないコンサルタント会社に裏金を払うのか、正規の支払いなら裏金にする必要もないだろう。
仕事を貰う為の事前運動金にせよ、取れた後の謝礼金にせよ、裏金である事の不自然。部外者の者が何故決定権を持っているのか。誰が考えても決定権を持っている人の所に営業に行く筈である。キャノンの誰かが「大光」の社長である大賀規久を指名したからこそ鹿島の担当者は大賀の所へ金を持って行ったのではないのか。あくまでも脱税事件で逮捕している訳だから脱税者本人だけの事件という訳か。どう考えても背任やら横領やら詐取やらという言葉が付いて回るような気がするのだが。
もし小沢一郎が検察批判をしなければ、検察は西松のもう一つの違反、原発利権の裏金集金人、白川司郎の犯罪まで進んでいた可能性があった。
白川は三塚博の公設秘書から亀井静香の秘書を経て、日本中の原発利権に食い込んでいる原発裏請負人である。十年前に八億の家を建てながら、金が有り余っているのか昨年末にも渋谷に四十億と噂される豪邸を建てた。
福島県の佐藤栄佐久知事や水谷建設社長が逮捕された時もターゲットの一人であったが辛くも逃げ切った。今度は確実と言われていたのだが、小沢一郎の検察批判で検察庁の空気が一変した。
この状態を一番喜んでいるのが白川司郎なのである。青森県むつ市に東京電力が所有する使用済み核燃料中間貯蔵施設があり、その隣接地購入資金を提供したのが西松建設で、しかもその購入者というのが暴力団系企業だった。隣接地購入者の目的は東京電力に買い取らせる事。西松は建設工事を請け負う事。
東京電力に買収を持ち掛けた者の中には麻生総理の秘書を始め、水谷建設の水谷功、白川司郎ほか十五人もいたという。東京電力が今のところ毅然とした対応で応じているようであるが、当紙などが買収話を持ち掛けていけば、恐喝未遂にでも問われ兼ねない話である。ここでも西松の資金提供はグレーゾーンなのである。
小沢一郎に対しての評価は、仏頂面で愛想のない対応に好き嫌いがハッキリしている。しかし毒は薬にもなる、という言葉がある位だから何にも出来ない優柔不断なパフォーマンスだけの首相より、今のような何もかもが乱れた世の中にはやはり乱世の小沢が必要かも知れない。