(敬天新聞5月号)
四月十三日名古屋地裁で、悩み事の相談女性に対し「霊に取り付かれている」「解決には除霊が必要」と不安を煽り、不当に多額の現金を支払わせたとして訴えられていた宗教法人・肥後修験遍照院(通称・六水院)と主宰者・下ヨシ子(息子はVシネマ俳優・水元秀二郎)に、「不安に陥れたりする行為は違法」として慰謝料と被害金を含めた約六一〇万円の支払いを命じる判決が言い渡された。
下ヨシ子といえば、フジTV「奇跡!アンビリバボー」といったテレビや雑誌で持てはやされ、小川眞由美や保坂尚希などの芸能人が師事していることで「カリスマ霊能者」で知られている、謂わば細木数子同類のペテン師だ。
提訴した女性はテレビ番組を見て相談に行ったというから、「オーラの泉」に続きメディアが被害を助長していることを改めて知る一件となったが、何より当局も及び腰であった宗教法人の「不安を煽り除霊と称して高額請求する」というグレーな扱いであった集金行為に、ハッキリと黒であると判決を下したことである。当局が及び腰なのは、信教の自由や神社・お寺が売るお守りや厄除けはどうなんだ?という反論があるからだろうが、真っ当な神社やお寺の従事者は「悪霊がついているから除霊しないと家族が不幸になるぞ」等と不安を煽って多額な請求を迫ることは無い。宗教法人だろうと無かろうと、霊能者や占い師でも同じである。真っ当にその道を生きる人達の道を閉ざす行為には鉄槌を下さねばなるまい。この判決が昨今、問題となっている悪質なカルト・霊感・開運商法の抑止に追い風となるよう切に願う。被害者は泣き寝入りしないで欲しい。
さて、永福舎の販売する「永福珠」なる開運グッズの調査を続けてきた。永福舎(大阪市淀川区西中島四-六-三〇)が販売する「永福珠」は、丹波哲郎の勧めで天台宗系寺院に出家し、霊鷲山世音院福富寺・大僧正・傳法阿闍梨になったという「道月住職」なる女僧が一本一本に念を込め製作し、身に着けるだけで願いが叶うと謳う数珠である。因みに福富寺を調べたところ天台宗ではなく真言宗であり代表は金井つきか(道月の本名?)である。その真偽を問う取材を申し入れたが、未だ回答を得ていない。また、数多ある開運グッズの中で特に怪しいと思われる業者の所在を調査したところ、永福舎のある大阪市淀川区に集中して在ることも分かった。そして、これら業者を束ねる親玉もいるようだ。と、これまで報じてきた。
開運グッズの製作者として、見た事も聞いたことも無い僧侶やイタコや霊能者が「メディアで活躍中の○○先生」などと広告塔になっているものや、宝くじが当たったといって大金に囲まれた購入者の写真と体験談を宣伝しているもの、無料相談と称する窓口を設置しているものには、先祖の因縁や霊の祟りなどの話を用いて不安を煽り、商品の購入を迫ったり、除霊と称して法外な金銭を取る悪質業者がいるので騙されないようにと注意を呼びかけてきた。
そんな中、道月住職の弟子と称する福富寺大阪分院(淀川区西中島三-一九-八)の院主「常照住職」が、苦しむ人を救う為に編み出したという「神葉占い」なるものが現われた。運営者は葉幸堂(京都市上本能寺前町四七二)である。
広告によると「神葉占い」とは「京都のある山中にて採れた葉を和紙加工し、それに占い希望者の名前と生年月日を書き、念を込めると、その人の未来が見える」のだという。占い料金は四千五〇〇円で何度でも相談に応じるという。
なんだか「足の裏で未来が見える」と言って逮捕された福永法源みたいな宣伝文句だが、当紙の追求は基より国民生活センターやテレビの報道特集で、数珠などの開運グッズ購入をきっかけに数千万円を騙し取られたという被害者の例が度々報じられ、必死に対策を講じている開運業者淀川グループの努力がにじみ出ている改新(改心?)の第一号店である。
因みに、テレビの報道特集(TBS・Nスタやテレ朝・Jチャンネル)は業者の名前を伏せているが、登場する霊能者・僧侶の手口からドリームパートナー(大阪市中央区北久宝寺町)やサクセスライフジャパン(大阪市淀川区西中島と天王寺堀越町)に間違いないだろう。二社に心当たりのある被害者は泣き寝入りしないで警察に告発して欲しい。
業者にとって、開運グッズは相談ダイヤルに引き込む為のきっかけに過ぎなかったのだが、開運グッズ無くして如何に相談ダイヤルに引き込むかという課題を、葉幸堂は占いの一般的な相場料金一回分で「何度でも相談に応じる」という良心的なフレーズでクリアするつもりだろう。
相談ダイヤルに電話してきた者に何度でも応じるのは、業者が洗脳を仕掛ける要であり従来どおりだ。しかし、利用者からの情報によると、占って貰おうと電話をすると厳しい素性チェックを受けるというから余程、何かを警戒しているようだが、お客さまを不快にさせてはいけないぞ。敵は本能寺に在りと言うではないか(当紙への投書は内部告発か同業だと思うよ)。
占い師や霊能者の本物と似非の境界線は何処にあるのか分からないが、少なくとも路頭に迷い悩める人の話を親身に聞き、進むべき道を指し示すことで、相談者の気持ちを少しでも楽にしてあげること、幸福に導くことが道理であり、「貴方の財産に悪霊がついている。浄化しないと家族が大病を患う」「財産を浄化するので差し出しなさい」等と不安を煽って金を取るのは非道である。
まして仏門に帰す者となれば、欲望に満ちた相談者に対して煩悩を断つことを説くのが道理であるが、開運グッズに登場する僧侶は「宝くじが高額当選」「ギャンブル連勝」といった欲望と邪念を叶えると言っているのだから、その素性の真偽は言うまでもないだろう。
会話を重ね相手の警戒心を解き放ち、考えを読み取るコールドリーディングなる心理的な話術を用いて悩みを言い当て、あたかも心の底まで知っているかのようなに見せかけ信用させるのが、占い師・霊能者のテクニックである。
占い師や霊能者による洗脳が耳目を集め、このコールドリーディングを用いたビジネス書まで出ている。無料や何回でもというシステムに惹かれ利用している内に、コールドリーディングによる言葉のトリックに惑わされ大切な虎の子を奪われないようにして欲しい。
この程、詐欺や悪質商法に悪用される私設私書箱に対し警視庁は犯罪収益移転防止法の改正を検討しているが、レンタルオフィスやポストだけといった実態を確認出来ない住所表記のあり方や、祈祷や占い等の悪質商法を規制すべく施行された改正特定商取引法の徹底と更なる強化、内閣府消費者委員会が検討しているという被害額が少なかったり、訴訟の負担が重かったりして、泣き寝入りしてしまう消費者を一括して適格消費者団体(内閣認定)が事業者を提訴して救済する集団的消費者被害救済制度の適用、宗教法人格の悪用などに厳しいチェックと法改正が急務である。
当紙の追求で開運グッズ販売から、携帯電話のメール占いへシフトした業者もいる。声も顔も見えないメールで実在しない霊能者や興味をそそる芸能関係者にサクラが成りすまし、巧みにサイトへ引き込み高額な利用料金を支払わせるサクラサイト商法の被害が増加しており、四月十九日国民生活センターは、八千万円も騙し取られショックで入院してしまった被害者の事例を挙げて注意を呼びかけている。
悪質業者が手を替え品を替え蔓延る限り、引き続き追及していかねばなるまい。大阪の霊能者・占い師には特に気をつけよう。
道月住職のナニを受け継いだのやら知らんが…