崩壊寸前富士薬品を内から貪る労働組合、富士薬品ユニオンの本性

(敬天新聞5月号)

配置薬トップ企業「富士薬品」

 今時の若い世代で、置き薬(配置薬)といった営業形態を知る者が、どれ程いるのだろうか。知っているとしても、利用している者は僅かであろう。

 一昔前は、どの家庭にも救急箱があり、その中身の薬は営業マンが定期的に訪問補充(何故か紙ふうせんのオマケ付き)し、使用分の料金を徴収するといった、訪問販売サービスの元祖的な営業スタイルがあった。その配置薬事業のトップ企業が、総業八十余年の富士薬品(さいたま市)である。

 今でこそ、街の至る所にドラッグストアがあり、大抵の医薬品の調達が簡単になったが、以前は街中に専門薬局が一軒もあればマシな方だった。その意味でも、配置薬は非常に必要とされ、事業者は頼りにされていたのだ。

ドラッグストア「セイムス」

 しかし、容易に医薬品が手に入る今、配置薬事業は廃れていき、業界トップの富士薬品ですら事業収益の大半を、企業買収で傘下としたドラッグストアの売上が占めている状況だ。

 更には、配置薬の顧客を多く抱えていた東北地方では、知っての通り昨年の大震災を受け、大半の営業基盤を失ったことも同事業の衰退が加速する要因ともなった。ただし、早くからドラッグストア事業の拡大を成長戦略として進めていた富士薬品は、根幹たる配置薬事業の衰退分を補って余りある、安定した高収益を継続してもきた。企業の代名詞である「配置薬の富士薬品」を金看板とし、全国展開するドラッグストア「セイムス」が堅調に収益をあげるといった、業界屈指の優良企業であることは間違いない。

 ところが、豊富な資金力を背景に次々と同業他社を買収していた迄は良かったのだが、畑違いの不動産取引に爪を伸ばし始めた頃から、徐々に雲行きが怪しくなっていくこととなる。

高柳貞夫が嵌った不動産事業

 富士薬品の創業者である高柳貞夫(現名誉会長)は、自らが先頭となり本業そっちのけで不動産取引に傾倒していった。最悪なのは、扱う物件の殆どが曰く付きの汚れ案件であったことだ。銭にものをいわせた企業買収は得意としても、不動産業界のイロハも知らない高柳貞夫は、当然の如く業界に巣食うブローカー等の餌食となった。

 競売物件等の仕込を得意としていた不動産業「日建」の渥美和弘(昨年九月逮捕)などは、打ち出の小槌と化した富士薬品マネーに喰らい付き、様々な汚れ案件を事件屋や反社勢力といった怪しげな人脈と共に高柳貞夫の元へと運び、僅か数年の間に少なくとも二百億円以上の資産を富士薬品に吐き出させたといわれる。

 そして、何れの物件も不良資産として抱えるに至ったのだ。こうなると、一般役員は元より親族でさえ経営に口を挟めない状況であった、高柳貞夫による超ワンマン経営も転換せざるを得なくなった。斯くして、高柳貞夫は経営の一線から退き、実子である高柳昌幸が二代目に就くこととなった。老害が齎した企業ダメージが極限まで膨らんだ末の、余にも遅すぎた禅譲だったといえる。

 本来ならば、前途洋洋の富士薬品を引き継ぐ筈だったのに、親父の尻拭いが最大の役目となる社長就任では、二代目ボンボンの昌幸の心中を察すれば恨み千万の思いであったに違いない。とはいえ、不良資産となった汚れ不動産の整理は緊急課題であることに変わりはない。しかし、先代の右腕として不動産事業の表裏を知り尽くしていた元専務の杉浦理介は、既に自ら命を絶ってしまっており、昌幸にとっては不良資産整理の道筋さえも立てられないのが現状でもあった。

 結果、整理に於いても先代が犯した不明瞭な不動産取引と同様に、怪しげな仲介を介在させての転売で整理を進めることに至ったようだ。

二代目ボンボンと「双海通商」

 既に、不良資産の一部は「双海通商」(東京都港区)に四十億円で売却したとの話もある。双海通商は此れを転売する事で、十数億円の利益を得ようと目論んでいるらしい。

 双海通商といえば、富士薬品マネーを食い散らかした渥美和弘の片割れでもある。高柳貞夫を散々誑かした上に、今度は二代目ボンボンを懐柔し自陣に引き込もうと算段している模様だ。当然、転売益を個別に還流するといった美味しい話を、昌幸には吹き込んでいると思われる。厄介な親父の尻拭いに嫌気がさしていた昌幸にとっては、正に渡りに船とばかりに飛び付いたことは容易に想像できる。

 不良資産となった物件の多くを所有している、タツミ興産や高柳興産は創業家が完全支配するペーパーカンパニーである。魑魅魍魎らと謀議を重ねるには格好の舞台である。さて、不良資産整理の目的が私腹を肥やすといった、あらぬ方向に進むなか、不明瞭な不動産事業のツケで被った悪しきイメージを、富士薬品は払拭できるであろうか。

 結論からいえば、胡散臭い企業のレッテルは易々と剥がれることはないであろう。逆に、不明瞭な不動産取引による損失を除けば、業界トップに相応しい営業利益を上げている富士薬品を、トップの昌幸が不良資産整理に目が向いている今の内に、会社を私物化しようととする勢力までが台頭する始末だ。その勢力とは、富士薬品の労働組合である「富士薬品ユニオン」だという。

富士薬品ユニオンは労使協調

 富士薬品の労働組合結成は十年程前と、近年になってからだ。創業家による同族企業である富士薬品は、最近まで労働組合の組成すら許してこなかったという訳だ。その弊害として高柳貞夫の超ワンマン経営を野放しにしたともいえ、現経営陣も同ユニオンには強く出れないという負い目もあるらしい。

 そもそも、富士薬品の労働環境は酷いものだったらしく、特に配置薬事業の営業職は人権無視さながらの過酷な環境におかれ、現在でも定職率が極端に低い水準だという。本来ならば、経営陣の失態や不作為を厳しく糾弾し、組合員たる社員の為に職場環境を改善し新たに構築する、今が又とない絶好の機会である筈だ。


UIゼンセン同盟 富士薬品ユニオン中央執行委員長 古山亮一

 ところが、同ユニオン中央執行委員会(古山亮一委員長)は、働く仲間の意見を汲み取ることなく何故か経営陣に迎合してしまったのである。富士薬品ユニオンの上部組織は、自治労をしのぐ日本最大の産業別単位組合である「UIゼンセン同盟」であり、右派系の労働組合に位置付けられている。

 その活動路線は労使協調であって、術からづ富士薬品ユニオン執行委員会も、糾弾事由を多く抱えているにも対立を回避し、経営陣との距離を縮める方針をとった模様だ。既に同ユニオンからは楠匡志取締役(ドラッグストア事業部長)、松本和浩取締役(管理本部長)、井上和弘監査役の三名が経営陣に入り込んでいる。

 それでも、労使協調路線が富士薬品労働者に有益に作用すれば問題ないのだが、結局は企業混乱に乗じて一部のユニオン幹部が甘い汁を吸うことのみに執着している現実がある。所詮は、社員に劣悪な労働環境を強いる事で、その分を営業収益に反映させてきたのが、創業家が支配する富士薬品の実態である。

 同ユニオン幹部も、一朝一夕で改善出来ない、歪んだ構造であることは百も承知なのである。為らば、せめて自分達だけでも甘い汁に有り付こうと、一般組合員を見捨てたということらしい。

富士薬品労働者の二重の悲劇

 思えば、銀座や歌舞伎町の高級クラブには、必ずといって労働組合専従幹部のボトルがキープされているものだ。

 何ら生産性のない労働組合である以上、その金は個々の労働者が納めた組合費に他ならない。

 職場環境の改善や、会社繁栄のために額に汗する労働者を後目に、専従幹部達は綺麗なネーチャンと夜毎、酒を飲み、組合費を浪費しているのだ。

 弱肉強食を常とする本紙としては、少しそぐわない言い回しかもしれないが、底辺の労働者が搾取される相手は資本家ばかりとは限らない、日頃から連帯などと口にする身内にこそ本当の敵は潜んでいるものなのだ。

 富士薬品ユニオンの組合員らは、今こそ経営陣と私利私欲の為に迎合した同ユニオン中央執行委員会幹部に対し、徹底闘争を仕掛けるべきである。

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