(敬天新聞3月号)
国民の社会不安が募る中、先祖の因縁や霊の祟りなどの話を用いて不安を煽り、法外な値段で商品を売ったり、不当に高額な金銭などを取る「霊感商法」の被害が跡を絶たない。身に着けるだけで幸運を呼ぶ、望みが叶う、病気が治ると謳い商品の購入を迫る「開運商法」も然りである。
最近では、ミヤネ屋でお馴染みの宮根誠司を幸運に導いたと謳い勧誘の手を拡げている霊感商法・開運商法・マルチ商法が融合した「エヌ・インターナショナル」社や、タレントのオセロ・中島知子が自称霊能者に洗脳されて奇行を繰り返していることが話題となっている。中島の借り受けているマンションに、親族まで連れ込んで居候をしているという自称霊能者は、中島の財産を食い尽したところでドロンだろう。
悩みを抱えた中島の心の隙間に入り込み、洗脳に成功した自称霊能者が、自身の欲求を満たす為にカウンセリングと称して、肉を食いカラオケ三昧の日々を過ごし、中島を二度とカメラの前に立てないほど激太りさせたのはその証左である。
ところで東日本大震災以降、不安を煽り数珠やブレスレットといった開運グッズの販売を巡るトラブルが全国で相次いでおり、開運グッズで運が開けることは無いので騙されないようにと先般、国民生活センターが注意を呼びかけている。被災者をターゲットにしているというから悪質極まりない。家族を失ったことや被災したことを、悪霊や邪気に絡めて不安を煽り、霊能者の名の下に高額な祈祷料やグッズの購入を迫るのだ。仮設住宅の被災者が見舞金まで取られた実例もあるという(詳細は国民生活センターHP二月二日発表情報)。
さて先般、永福舎の販売する「永福珠」なる開運グッズの情報が当紙に寄せられ、調査を続けてきた(敬天新聞第一六九号掲載)。
永福舎が販売する「永福珠」は「霊鷲山世音院福富寺・大僧正・傳法阿闍梨」という「道月住職」なる女僧が一本一本に念を込め製作しているという。その真偽を問う取材を申し入れたが、未だ回答を得ていない。顧問と称する大阪弁の男が「堺のファイブウエイが運営しとるんや」と電話で対応したのが最後である。
単に「ご利益がありますよ」とグッズを販売するだけに止まれば問題は無いが。しかし、開運グッズの製作者として、見た事も聞いたことも無い僧侶やイタコや霊能者が「メディアで活躍中の○○先生」などと広告塔になっているものや、宝くじが当たったといって大金に囲まれた購入者の写真と体験談を広告宣伝しているもの、無料相談と称する窓口を設置しているものには注意が必要である。
ある開運グッズ購入者によると、雑誌広告の開運グッズはホンの入り口に過ぎず、本命は開運グッズの購入者が、特典である「祈願成功に導く無料サポートダイヤル」に電話をかけて来ることだという。
サポートダイヤルは「○○先生が無料で幸運に導く為のカウンセリングをする」という触込みだが、購入者が「無料」という言葉に誘われて、祈願成功に至る相談をしようと電話をすると「○○先生は大変お忙しい方で電話に出られません」「代わりに弟子の私が話をお受けします」といって、本命の先生が出てこない、先生が虚像であることが多い。そして、姓名判断を名目に氏名・生年月日・血液型・住所・電話番号を聞き出す「名簿作り」を企て(心が弱く信じやすい名簿として架空請求業者等に売買されることもある)、さらに「あなたの邪気は強すぎる」「このままでは幸せになれない」と不安を煽って高額な商品購入や、高額なお祓いの勧誘を仕掛けてくるという。
永福舎をはじめ、開運グッズを販売する怪しい業者を幾つか取材をしてみようと住所を調べたところ、ある事に気がついた。それは、多くの業者が道月住職の開運グッズを販売する永福舎と同じ大阪市淀川区にあるということだ。
@気功療法師・中条忠勝先生の気功魂と称する石を売る「中条気功研究所」が淀川区木川東三-九-六、
A霊能者・二階堂春江先生の三神願珠と称する数珠を売る「サクセスライフジャパン」が淀川区西中島四-四-二五、
B明神流心・明神流華という両名の流気幸珠と称する数珠を売る「パーフェクトデイズ」が淀川区西宮原二-六-一六、
C霊能者・天羽美子先生の天導石と称する石を売る「天羽相談所」が淀川区宮原五-六-三二、
そして大僧正・道月住職の永福珠と称する数珠を売る「永福舎」が淀川区西中島四-六-三〇という具合だ。何れも新大阪駅を中心に歩いて移動できる距離にある。謂わば淀川区は開運業者が軒を連ねる開運銀座である。いつから淀川区は霊能者が集うパワースポットになったのだろうか?それともこれら開運商法の業者を束ねて牛耳る親玉組織が存在するのだろうか?
道月住職の永福舎を調査中に出てきた顧問と称する大阪弁の男が電話で言った「堺のファイブウエイが運営しとるんや」という一言が、改めて気になるところである。
そこで、大阪まで実態調査に行こうと思ったが、行ったところでレンタルオフィスや秘書代行事務所だったら旅費が勿体ないので、参考のため当紙事務所から自転車で二〇分くらいの所にある笑福堂(板橋区清水町六八-九-二階)を取材してから大阪行きを見極めることにした。
笑福堂の広告によると、琉球神話聖地の久高島で生まれ、シャーマン(ユタ)なる霊能者として育てられた「久高数子先生」が、願いを必ず叶える為の力を閉じ込めたという数珠などを販売している。
広告には宝くじが当選し、札束を手にした購入者の写真や体験談、電話による無料カウンセリング、全国で行う無料講演会、問い合わせた方全員に無料でブレスレットをプレゼント、抽選で現金一〇万円プレゼント、身に着けただけで体に変化が現れたことを示すサーモグラフなど、申し分の無いくらい開運商法の怪しさが漂っている。
そこで、高額な商品を購入するほど余裕は無いので、無料のブレスレットを申し込み、効果を実感してみることにした。取り寄せたブレスレットには注意書きとして「開封する前に使用法があるので必ずTELで確認してください」と書いてある。
無料相談ダイヤルに電話をすると、久高先生の弟子と称する担当者を紹介され「無料で送った天然石の数珠を握って願い事を唱えれば三日以内に叶う。叶わなかったら電話をください」と言われる。
三日経って何も起きないので電話をすると、名前・生年月日・血液型と言った個人情報を、久高先生に鑑定をしてもらうことを名目に聴取される。直接、久高先生に相談したいと言うと「先生は忙しい方で世界中を回っているので居ません。私が悩みを先生に伝えて、回答をお知らせします」という。
そして、一旦電話を切って待つこと三〇分くらいで、回答の電話がかかって来る。すると担当者は「彼方の邪気が強すぎて、無料のブレスレットでは邪気が祓えず、幸福に導くことが出来ない」と言って、商品購入を勧めてくるのだ。
念のため天然石だと言う無料のブレスレットを宝石店の鑑定士に見てもらったところ、天然石ではなくプラスチック製であることが判明した。
そこで、伝説のユタなる久高先生が実在するのか?笑福堂は「品質には自信があります。当社鑑定士がストーンを厳選」とうたっているのに、数珠がプラスチック製なのは何故か?を問う為に、鰹ホ福堂が特定商取引法に基づく表記として示す住所を、神秘的な琉球の薫り漂う事務所を勝手に想像しながら訪問することにした。
しかしそこにあったのは「ALWAYS三丁目の夕日」の如く、貧しくとも逞しく生きる昭和の薫る佇まい、近所で聞いても人の出入りは見たことも無いというボロアパートの一室だ。幸運を呼ぶという開運グッズを売る前に、先ずは己が開運セヨ!と言ってやりたい気分だ。ポストには笑福堂とあるが、住所表記の為のみに設けられたダミー事務所といった様相だ。どうやら大阪へ行く前に、また一つ用事が増えたようだ。自称霊能者に呪われないように帰郷して佐野厄除け大師にも御参りしなきゃな、くわばらくわばら。つづく。