(敬天新聞3月号)
福井県敦賀市では、原発推進派が圧倒的多数を占めている。
当紙が動向を注視している「河瀬一治 敦賀市長」も、原子力発電を推進することで、五期も連続して市長の椅子に座っている。驚くことに敦賀市やその周囲の市町村では、このご時勢に、既存原発の再稼動だけではなく、更なる新しい原発敦賀3号機4号機の建設を「住民の総意」と公言し、福井大学には附属機関として国際原子力工学研究所の開設がされるのだそう。
フクシマ原発の大事故があっても、川瀬一治市長が原発推進の姿勢を頑として守り続ける裏には、原発運営企業が現役の社員を議員として敦賀市議会に送り込み、敦賀市政イコール原発運営企業の代弁機関にかねてから変貌していたからだ。
敦賀市議会を仕切る北条正副議長という人物がいる。この北条氏、現役の「日本原子力発電株式会社」社員だそうだ。先日も東電社員であるのを隠して区議会議員をやっていたのが報道によってばれた者がいた。
しかし、この北条氏にいたっては、日本原子力発電社員の立場を隠すどころか、日本原子力発電という会社の意図する方向へ市政をもって行こうとするのだから、これを「公人」とか「公務員」として特権を与えていいものか。
先日も河瀬一治市長とこの日本原子力発電社員兼敦賀市議会議員の北条氏、その他、美浜、おおい、高浜の原発推進議員が、原発大臣である民主党細野の元へ陳情にいったそうだ。これを敦賀市民の声を国に陳情したと言ってはいけないだろう。
現役の原発運営企業の社員が市議会議員の名を使って行う、「民間企業の私的陳情」のニュアンスの方が強いといっていい。
この北条氏はこの日本原子力発電という会社から会社員の給料として、年間、何百か、千何百か知らないが金をもらっていることはゆるがない事実なのだから。
そして原発に関わる任期があと少しの細野が何もできなくても、四月からスタートする「原子力規制庁」が窓口になれば、原発再開はまもなくだと考えているようだ。
北条正氏のブログを読んでいて脅威を感じた。当紙も脱原発ばかりではなく、今まで作った原発を安全なエネルギー源に代えていく方が合理的であり、先人の努力を無にしない現代に生きる者の責務だと考えている。
しかしそれは、原子力と将来の国民との関係をよくするためのものでなければならず、断固として脱原発だとか脱原発は実は過激な左翼思想だと早急に言い放つべきではない。それは我々のような民間の右翼団体といわれる連中ならまだしも公的に影響のある「議員」という公人が行ってはいけない。
北条氏のブログには、
「嶺南の高校生の就職先の多くが原子力関連企業だ。嶺南から原子力発電所がなくなることは、雇用の場がなくなること」「原子力政策の大きな変更によっては、人口減少に拍車」
といった、如何に敦賀市が原発の恩恵を受けているかの文言が多い。
そして恐ろしいのは、敦賀市で反原発を考えることについてか?
世論迎合で決まる風潮に、敦賀市も翻弄されている
…と、言い捨てていることである。
原発の再稼動が「世論迎合」など、原発会社の社員だからといって、飲み屋でグチとして言うならともかく、市民を代表する立場の議員としてのインターネットによる公開発言でしてはならないだろう。
しかしこれが、原発企業が牛耳る原子力発電城下町の福井県敦賀市の真の姿なのだろう。
福井県議会に対し、河瀬一治市長をはじめ敦賀市の原発推進派議員が出した「原発再稼働の要望」を県議会が否決したそうだ。日本原子力発電・敦賀原発1、2号機の再稼働。同3、4号機の本格着工。高速増殖炉「もんじゅ」の存続と研究継続≠ニいう内容。北条氏の発言を借りれば、これが「世論迎合」か?いや、福井県議会の出した「否決」こそ、県民の安全を「日本原子力発電」という一民間企業の存続より優先させた、行政として当然の判断だろう。
当紙への情報提供者によれば、敦賀市長である河瀬一治氏が次回は県知事当選を目論んでいるというが、この地域がこういう「企業独占政治」の土地柄なら、その(福井県知事)実現も夢ではない。
「組織の利益を誘導する者を行政機関の長へ」、「自らの宗教の拡大に信者を国政に」などなど、特定の営利団体が、政治家を作り出すために一丸となったら、それは労組や日教組でもいえるが、鉄の結束と厳しい監視の目で組織の末端までを選挙協力させて「当選確実」に持ち込むことは、いとも容易いと、われわれは皆、過去の選挙の歴史の中で学んできた。
国内でも「原発銀座」などと言われ、原子力発電機関の集中する福井県で、その将来を中立的に考えなければ国家的な安全が危ぶまれる原子力というテーマに対しスポンサーつきで絶対推進の立場をとる河瀬一治市長のような立場の人が、そのトップに立ち行政の采配を奮うことは危険なことである。そして、それは原発城下町という多数の選挙民を抱える地域にとってはそう難しくもなかろう。
変装?までして、いそいそ東京の銀座にやってきて「KENNEDY HOUSE(ケネディハウス)」なるライブハウスでアロハシャツを着てライブを行ったり、銀座の恋に胸を時めかせたりするこの河瀬一治市長を、当紙としてはかわいげのあるおっちゃんだなという視点から優しく報じているつもりだった。
しかし敦賀市政がこんなにも一民間企業に首根っこを掴まれているのであれば、この先も、市民の声は企業利益に優先されることはないだろう。そしてこの規模が「県政」にまで膨れ上がったら、それは世論と敵対しても原発をゴリ押しできる強力な、独立国家のような公共団体の誕生として、国の憂慮になるだろう。
当紙としては、「ジャクエツ」なる組織と東洋紡と特別養護老人ホーム渓山荘とあわせて十三億円にものぼる情実があったことの詳細な調査や、ジャクエツさんと河瀬市長との具体的な関係、または敦賀市民に報せるべき多くのことを、今後は褌を締め直して徹底報道していかねばと思う。