(敬天新聞12月号)

【さいたま市の名士でソープランドの(大)大家、井山一男】
性風俗業界の頂点といえるソープランド。合法的な性風俗のなかで、公然売春が黙認されている唯一の存在だ。警察が摘発に躊躇する理由としては、売春行為の立証が困難であるとの法的限界を言い訳としている。
ソープランドでの売春行為は、客とソープ嬢が同意のもとに事に及んでいるだけで、経営者からの強制は一切無いという建前が存在する。一方で、性のハケ口となるソープランドの存在が性犯罪抑止となり、地域自治体への多額の税収が見込めることも、摘発除外の恩恵を受ける理由ともなっている。
本紙所在地の周辺である西川口エリアでも、数年前から街の浄化計画が進み、所謂、本番行為を行なう店舗型の性風俗店が軒並み潰されていった。しかし、複数あるソープランドに限っては今も健在である。
所轄警察や地域自治体からすれば、ソープランドまで潰してしまうと全ての性風俗が地下に潜り違法営業が横行しかねないと言い訳したいのであろう。経営実態が掴み難い性風俗店に比べ、ある程度は監視や指導が容易なうえに高い税収が見込めるソープランドは、なかば合法売春の事業者たる位置付けで庇護されているのだ。
だからといって、ソープランドが一般の事業活動と同列であるとは言い難い。最大の問題は暴力団の介入・関与である。経営そのものに介入せずとも、その周辺業務に関与する事例は多々あり、それが組織維持の資金源となっている。
例えば、女性従業員の斡旋に於いては紹介やスカウト業を建前に恫喝強要の疑いが常にある。また、性風俗の業種であることからクレジットカードの取次ぎ契約を結べない経営者の多くは、カード決算を他に依頼するケースが殆どだが、その代理業者の実態が暴力団であるともされている。ソープランドが密集する地域には、必ずといってチケット屋やカードの現金化を謳う店舗が寄り添うように存在する。これらの業者が、カード決算を求める顧客に対し、ソープランドに代わって代行するのである。当然、名目は実在する飲食店等での支払いへと変更される。
厳密にいえば詐欺行為にもあたるものだが、現金が無くとも遊べる顧客、顧客を逃がさずに済むソープランド、何より原則取次ぎ不可の性風俗店から利益を確保出来るカード業者にとっては、詐欺紛いのカード屋を黙認する理由としては十分だ。誰も損をすることない被害者なき状況のなか、警察や自治体さえも目を瞑り事件化や摘発対象になり難い業種ゆえに、暴力団が関与する隙が生まれるのだ。
一昔のようなミカジメ料や備品購入の強要も多少は残っているだろうが、ソープランドから派生する雑多な業から収益を得、それが暴力団の糧となっているのだ。斯様に、ソープランドから上がる高収益のオコボレを狙って、暴力団を筆頭とした胡散臭い連中が寄生しているのが現状のようだ。
さて、そのなかでも最も安全且つ確実な収益を得られる業態が、ソープランドの土地・建物の取得だといえる。ソープランド営業者の多くに、店子として建物に入居している者がいる。勿論、利益圧縮を理由として営業収益を分散する意味から、関連業者に意図的に土地・建物を売却する例もあれば、当初から賃貸であったり自己所有でありながら資金難から売却した例もあるだろう。
ただし、殆どの各地方自治体では条例等によってソープランドの新規出店は不可能となっている。原則、建物の一部改修が認められているに過ぎない。つまりは、現存するソープランドが入居する不動産は、貴重な高収益物件ということになる。当然だが、ソープランド営業者も現在ある建物のみでしか営業継続が出来ない理屈となる。店子としてソープランドを抱える大家にしてみれば、建物を維持する間は賃貸契約が途切れることもなく、他に転居の選択肢がないソープランド営業者の足元を見透かした、有利な家賃設定が可能でもある。
家賃収益に固執し潤沢な資金がある不動産屋であれば、小洒落た商業ビルを所得する位なら、ソープランドが入居する土地・建物の方が魅力ある物件であることは間違いない。また、高設定の家賃収入が保証された上に、何かと煩わしいソープランドの経営には関与することもなく、必要最低限の管理で事足りる。更に世間体にしても自らがソープランドの大家であることを表沙汰に晒さない限り、堅実な不動産屋として評価される。正に願ったり叶ったりの夢の物件である。
こういった現状を踏まえれば、ソープランド関係の物件を新たに所得する事が、どれ程難しいかは敢えて説明する必要すらない、推して知るべしといえる。
しかし、その困難ともいえる物件を、いとも簡単に手にした者が存在する。それも一つの物件に留まらず、凡そ同時期に複数の物件を手中に収めたのだから驚きだ。
その者とは、さいたま市の不動産業界では、その名を知らない者は皆無ともいわれ、地元を代表する名士でもある井山一男という男である。それでは、如何なる手口でソープランド物件を手に入れたのか。要は簡単な話である。元々から複数の同物件を所有・管理する会社を、自身の支配下としたに過ぎない。
既存会社の買収は珍しくもないが、それが正当な事業活動から乖離した、深謀遠慮をめぐらした巧妙な乗っ取りというなら話は違ってくる。しかも、乗っ取りを完璧に仕上げるが為に、手にした会社の整理を先手先手に進めるなど、後々に勃発するであろう争い事を予見していたかの対処を見る限り、全てが計画されたものであったことが伺い知れる内幕となっている。更に加えれば、体よく乗っ取った会社は親族が築きあげたものであり、血生臭い裏切り行為の末に仕上げた謀であったことからも、通常の事業活動上の買収でなかったことは明らかだ。
さて、その乗っ取りの詳細を記す前に井山一男についてだが、評判通りのやり手らしく、不動産業だけでも複数の会社を展開している。加えて、表面上は経営に携ってはいないものの、事実上は支配下に治める会社も確認されている。不動産業の事業経営者には、何故か知らないが一見して非効率と思われる、業務が重複する会社を同時経営する者が多いが井山一男もその内の一人である。
代表的な会社は、平和システム株式会社(さいたま市浦和区)で、井山一男が代表者となっている。又、不動産業に加え自己資産の管理を主たる業務とする株式会社新和商事がある。同社の所在は、さいたま新都心にある井山一男の自宅になっているが、これぞ豪邸といえる広大な敷地を有する屋敷である。この二社が地元に根付く堅実な不動産屋たる言うならば表舞台の顔となっている。

【 〔有〕アールマネージメントジャパン・井山一男が賃料収入として収益を上げているソープランド店舗一覧(クリックで拡大)
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地元を代表する実業家らしく、井山一男には箔付きの地位もある。それが、さいたま中央ロータリークラブの理事(社会奉仕委員長)でもあることだ。ロータリークラブを簡潔に説明すれば、社会奉仕を行動規範とする団体である。基本的には地域の名士や会社経営者が会員となっているが、近年は会員の高齢化も進み入会者より脱退者の方が増加傾向にあり、昔ほどのステータス感は薄まっている。それでも、同クラブの理事として地元の顔役であることに違いはない。
しかし、井山一男の事業収益の大半がソープランドからの家賃収入であることを、同クラブ会員を含め周辺者はしっているのだろうか。勿論のこと職業に貴賎はないし、況してやソープランドを店子に持つ事が悪いことではない。上記したようなソープランド周辺で反社的事業で録を得ている輩と比べても、井山一男のソープランドに関連する事業に法的な問題は見られない。
ただし、暴力団排除条例が全国で施行された今、暴力団との密接交際者にあたる可能性は十分にある。井山一男が実質所有する土地・建物の店子であるソープランド営業者が暴力団の周辺者であれば、物件を提供することでその営業に加担していると認定されなくもない。つまりは、暴力団周辺者の利益に繋がる賃貸契約を継続しては為らないと、いつ何時お達しが来るかもしれない状況にあるといえる。
しかし、井山一男は抜け目なく対処を講じていたのだから、流石やり手の不動産屋である。高収益の賃貸業を隠すのが目的だったのか、地元名士たる立場からソープランドの大家であることを単に世間に知られたくなかったのか、乗っ取った土地・建物を形式上処分することで前所有者の返還要求を困難とする目的があったのか、どれもが計画の内と思われるが、何れにせよ井山一男はソープランド関連事業の全てを、自身の周辺から遠ざける事に成功している。
これら謀の舞台となったのが有限会社アールアンドアイマネージメントジャパンなる会社である。井山一男が筆頭株主の資本金三百万円のちっぽけな会社であるが、外部からは井山一男の存在は一切確認することは出来ない。
アールアンド社はバブル崩壊後の平成三年に設立されたが、当時の井山一男は何の権限も有していなかった。同社を支配していたのが、昭和五十年頃から西川口・大宮・博多・秋田・加賀などの各地でソープランドの経営を展開していた、井川グループの長、井川健一であった。そして、同人の片腕として経営全般に関っていたのが、後に裏切ることになる井川一男だったのである。
事が動き出したのは平成五年になってからである。其れまで、各地のソープランド営業者から入る家賃収入に加え、貸付金の返済等を併せ月に六千万円の実入りがあったそうだ。しかし、ご多分に漏れずバブルに踊った井川健一は株取引や不動産漁りにのめり込み、資金繰りが急激に悪化してしまったそうだ。そこで、片腕だった井川一男の助言を聞き入れ、ソープランドからの家賃収入を見込める土地建物をアールアンド社に譲渡することで、有益資産を守るが為に囲ったのである。
それまで、営業実態が無いに等しかったアールアンド社は、一瞬にして企業価値が上昇したのである。井山一男が本格的に乗っ取りに着手したのは、その三年後となる平成八年のことだ。計らずとも井川一男の助言が功を奏し、アールアンド社は順調に利益を上げていた。
一方で、井川健一の浪費は留まることなく、ラスベガスのカジノに頻繁に出向いては、億単位の金を溶かし続けていた。そこで井川一男は、健一の子供等に対し提案を持ち掛けたのだ。「このままでは会長(健一)が全てを無くしてしまう。君等(健一の息子・娘)の為にも会社を守りたい。それには自分がアールアンド社の株主となって実権を握るほか術はない」と、飽くまでも資産流出を防ぐのがを目的といって子供等を説得したのである。
又、この提案に説得力を持たせた要因の一つに、その当時には既に事業に成功し相当な財産を築いていた井山一男が、アールアンド社を含めた井川グループに対し、二十億円余の担保提供を行なっていたことが決め手となった。
息子・娘にしてみれば、浪費三昧の父を野放しにすれば、先々に手にする財産分与が目減りしてしまうと、当然のこと頭を過ぎったであろう。又、父親の片腕にして多額の担保提供をしている井川一男に迷惑はかけられない。何より、親族の一員として井川グループに貢献し事業全般を把握している井川一男には、全幅の信頼を寄せていたことから、この提案に乗ってしまったのである。
斯くして、アールアンド社の実権は増資によって筆頭株主となった井川一男の手に渡ったのである。片腕と実子による反旗によって、実権を剥ぎ取られたことに一月も後になって気付いた井山健一は、烈火の如く怒りを露にしたという。井川一男の裏切りによる乗っ取りだと激しく主張する父の言葉に、漸く自分達が利用されたことに子供等は気付いたのである。
しかし、既に実権が移った有限会社の内情など知る術もない。又、正規の増資手続きによる株主変更を覆すだけの法的根拠も乏しいともなれば、最早打つ手も無い現実と自らの愚かさを呪う他なくなった。勿論、井川一男がアールアンド社の株主となる根拠であった二十億円余の担保を弁済すれば、同社の実権を奪い返すことも可能であっただろうが、其れこそ現実的に不可能なことであった。
唯一の希望は、複数のソープランドからの家賃収入による継続的な高収益を誇るアールアンド社の実権を握った井山一男が、自らの担保を消化していくことに縋るしかなかった。それから凡そ十年余り、井山健一と子供等は耐え忍ぶことになる。
平成十八年二月、意を決した井山健一は息子を伴って井山一男の自宅に乗り込み、最後となる話合いに臨んだ。そこで、アールアンド社の収益を十年に渡って独り占めした結果、井山一男の残債は半分の十億円まで目減りしていた事が判明した。井山健一は正確な残債額とアールアンド社の現状報告を約束させ、併せ残債を弁済する用意があることを告げ、後日の連絡を待つことになる。
これでアールアンド社を取り戻す希望を見た井山健一であったが、後日あった井山一男からの言葉は「話す事は何一つない」といった、止めの呪言を浴びせられただけだった。裏切りから十年も耐え最後の希望さえも潰えた井山健一は、それから僅か二ヵ月後に恨みを抱き失意の中で窮死した。ところが、井山健一の死を以って、井山一男の乗っ取りが完結した訳ではなかった。それどころか、井山健一との最後の話合い以前、既に乗っ取りの仕上げに着手していたのである。
平成十七年十一月の時点で、加賀市・博多市・秋田市にある、何れもソープランドが入居する土地・建物を売却していたのである。又、井山健一の死後直後には、同様の西川口・大宮の土地・建物を売却している。井山一男の当初からの言い分を有りのまま鵜呑みにすれば、自身の提供担保の保全が為にアールアンド社の株主となり、最終的に残債を同社の資産売却によって全額回収したという事になる。
しかし、これが全くの嘘デマカセでしかないことが露呈している。井山一男による謀の真の目的は、汚い裏切りを重ね手にした宝の不動産を、最後までしゃぶり尽くすことにあったのだ。
都合五件の不動産の売却先は、全て有限会社ソモンとなっている。同社の代表は嘗て井山グループの元経理部長であり、現在は井山一男の子飼いの一人であると言われている。つまりは、アールアンド社の収益を散々収奪した後、頃合をみて物件を売却し残債の回収を完了する。
飽くまでも自身の財産保全の為に正当な権利を行使しただけと、井山健一と子供等には主張する。その主張を正当化するために、残債に見合った売却額を設定する。或いは、あまり高値で売却すると余剰金が発生し、アールアンド社の整理には不都合が生じるので、市場価値を無視した捨て値に近い売却額にする。その後、物件の移動先であるソモンを裏から支配し、物件が朽ち果てるまでソープランドからのアガリを吸い上げ続けるというのが、井山一男が描いた絵図の全貌だったのである。
さて、これ程までに徹底した乗っ取りは記憶にもない。況してや親族間でのことである。井山健一の子供等に父を裏切らせた挙句、無慈悲に斬って捨てる。勿論、井山健一の死に直接手を下した訳ではないが、けして往生とは表現できないような、トコトンまで追い詰め恨み骨髄のなか窮死させた原因は、間違いなく井山一男にある。改めて推し量れば、アールアンド社を完璧に丸裸にすることで、一銭たりとも渡してなるものかといった怨恨めいた井山一男のドス黒い本音が透けて見え、何とも寒気を覚える思いだ。
何れにせよ、今回は紙面三面を使って本件を報じることになったが、それでも背景と経緯を簡単に紹介しただけに過ぎない。今後は、経緯の一つ一つを切り取りながら、より詳細に報じることで、名士面した井山一男の化けの皮を一枚ずつ剥がしていく予定である。