2009/06/11
労災隠しを加害企業がやるのは、その裏に他の違法行為、例えば偽装請負・偽装派遣二重派遣、またはパワハラセクハラなど表沙汰に出来ない犯罪行為を社内で抱えているからに他ならない。
多重債務者がサラ金からヤミ金に走って更に借金苦を背負ったり、空き巣が家主と直面して、単なる窃盗犯から「居直り強盗」になってしまうのにも似た行き当たりバッタリの短絡思考。会社のリスクマネージメントに当たる者が短絡思考だと、その場を取り繕うために(派遣の現場などでは特に)やらなきゃまだ傷の浅いような「労災隠し」なんて悪徳行為に安易に走ってしまう。悪行の上塗り。
労災隠しが犯罪として認定されるようになった昨今、当紙でも現在行われているリアルタイムの労災隠しについてひとつ。
といっても、この労災隠しの元になっている事件は、昨年から報じていた「人材派遣アンツの偽装請負二重派遣シリーズ」のこと。
株式会社アテナ(本社:東京都江戸川区臨海町5−2−2)というダイレクトメール発送代行やデータ管理業務、物流ビジネスの大手企業がある。
このアテナ社のアテナ新東京物流センター(千葉県船橋市西浦3−6−1)の「ホロニック部署」という、商品梱包作業を行う部署に、本紙に情報提供してくれた労災被害者の男性が、「人材派遣サービス・株式会社アンツ」という会社から二重派遣(正確には三重派遣)、偽装請負によって派遣され、アテナ社の社員の指揮の下で労働していた。
労災かくしの原因となる労働形態の多くは、偽装請負とか偽装派遣とか言われるものである。偽装請負・偽装派遣とは、仕事発注者と下請けが業務を受発注する際、業務請負や業務委託・・・つまり「請負業」の契約形式をとりながらも、実態が単なる労働者供給・・・「労働者派遣」となっている場合をさす。
最初から人材派遣契約とすればいいものを「偽装請負」方式にする方が、発注者側にとって有利なので、多くの人材・労働力供給業務委託の際、契約形態を偽装・隠蔽することから「偽装請負」と呼ばれるようになった。となると「偽装派遣」とは正しくない呼び名だが、一般的に「請負」という業種名よりも「派遣」という呼び方のほうがメジャーだから、「偽装派遣」と呼ばれるようになっただけで、意味は同じである。
ダイレクトメールサービス業者のアテナ社が、アンツから人材を派遣してもらい、アンツが自分の派遣社員に労働をさせているスタイルについては、本来であれば、派遣会社(アンツ)の社員を常駐させて、派遣会社(アンツ)の指揮命令下に労働者をおかなければならない。それを偽装派遣の形で取引させて貰っているアテナ社の社員に派遣労働者たちを直接レンタルしてこき使わせているだけだから偽装請負となり、派遣業法に違反する違法行為である。
本紙では労災隠しというより派遣先アテナ社と派遣会社アンツの不作為をとっかかりに、――アンツからの派遣労働者が千葉県船橋のアテナ新東京物流センターにおいて、アテナ社の社員の監督の下、労働し、他の労働者の事故を防ごうとした際、逆に自分自身が大怪我をし労災被害者になってしまった事に対し、被害者の直接の雇用者であるアンツも現場監督をしていたアテナ社も一切知らぬ存ぜぬを通し、被害者に労働基準監督署に報告させない為の深夜の脅迫行為≠ワで行ったこと――を追及し続けていた。
(当初はまだ、この事件が労災隠しにつながるとは考えていなかった)
ところで、この時点で人材派遣のアンツと派遣先のアテナ社は、「労災隠し」の他に幾つも法律違反を犯している。
まずアテナ社の容疑は労災かくしの他に労働基準法違反と労働安全衛生法違反である。
労働安全衛生法では、事業者は機械・器具その他の設備による労働者の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。しかし、アテナ社はアテナ新東京物流センターという危険いっぱいの作業倉庫内に怪我することが容易に予測できる鉄製のパレットやコンテナが散乱しており、それを移動させたりする為の危険な作業を、女性ほか力のない者に素手でやらせていた。
(本紙に情報提供くれた労災被害者である派遣社員は、まさしく女性労働者が危なげにコンテナのようなものを移動させようとした際、怪我をする危険があった為、とっさに助けようとして労災に当たる大怪我を負ったものであり、完全にアテナ社の労働安全衛生法に定められた義務違反の結果による労働災害であった)
アテナ社は、労働者の危険を防止する義務を怠っていた訳だ。事故が起きないよう安全な倉庫内労働環境をレイアウトするなり安全装置を設置するなり、安全な使い方について十分な安全教育をするなり。そもそも女性に大怪我しそうな重労働などさせないなりしておけば派遣社員の人が労災被害にあうこともなかった。
アテナ社とすれば、被災労働者はアンツからの派遣なのだから、怪我もアンツに責任があるし、安全教育もアンツの義務ではないか?位のことを言いたいのだろう。しかしアンツなどハナから人材を右から左にクチ入れして稼ぐことしか頭にないブローカー根性の商売人のようなもの。
被害者の怪我の具合より労災隠しが気になって「全てお前の責任だ。労基に言うなよ」と脅迫するくらい、労働災害に関して無責任であるから、使い捨ての派遣労働者に「安全教育」をするなどというまともな期待を抱いても無駄だ。
この「安全教育」という物も労働安全衛生法に定められた事業者の義務である。事業者としてのアテナは派遣労働者達に対し(それが結局、正式な派遣ではなく偽装請負であるゆえ)厚生労働省令で定めるところの、従事する業務、物流センター内の重労働に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
(そもそも鉄製のコンテナで大怪我する位の重労働を強いるクセに求人広告では「楽しい軽作業」のようにうたう派遣屋のアンツが悪いのだが)
労働安全衛生法に定められた安全教育義務を怠り、労働者の危険を防止する義務を怠り、あげくに大怪我した労働者をその場に放置するという労働基準法と労働安全衛生法に対する義務違反を重ねた派遣先のアテナ社と派遣会社のアンツは、労災隠しがなくてもこの労働安全衛生法違反で処罰される。
結果からいうとこの労働基準法・労働安全衛生法違反での処罰を逃れるため「労災隠し」をしたことになるのだが、それによって「有印私文書偽造」の罪まで犯すに至ったわけだ。
アテナ社とアンツの労災隠し詳細については、明日また報じる。
本日はこのアテナ新東京物流センターにおいて、アテナ社の労働安全衛生法義務違反(労働者の危険を防止する義務と安全教育義務の不履行)によって、紛れもない労働災害にあった被害派遣社員の方が派遣会社アンツの代表長尾康裕およびアンツ役員陣に配達証明で通知した手紙を掲載する。
手紙は4月27日にこの労災被害男性が配達証明郵便でアンツ全役員に送付した。この手紙とゴールデンウィーク明けに出した手紙(明日掲載)を読み、アンツ側の弁護士から、労災被害者に電話があった。
この時の会話内容のみならず以前から録音して貰っていた電話の内容も全て聞かせていただいていたが、アンツ側弁護士はアンツが全て悪いと認めているにもかかわらず「長尾に人として男としてキッチリ謝ってくれと伝えろ」という要求を、ボソボソした要領の悪い口調でノラリクラリかわし続けてきた。
というより、労災被害者の怒りの炎を燃え上がらせんがために電話してきているような……誠意のあるなしに関わらず被害者の被害意識を逆撫で&増幅するような電話であり、怒らせたら怒らせたで、それをなだめる説得力があるわけでもなく、被害者の発言に反論できずに「ハイ、ハイ・・・しかしですね」とまったく仲裁の要領を得ていない感がある。(アテナがアンツに弁護士を立てるそうだけど、弁護士負けしないようにね、アンツ長尾社長)
労災被害にあった彼は、警察やら労働基準監督署にもキチンと相談に赴いたりするうちに、自分の身に振り被った労働災害が、加害者であり、事業者として労働基準監督署に自社の労働災害について報告義務のあるアテナ社や派遣屋のアンツが、労働基準監督署に対する報告までも怠っていた事を、最近になって労基署のほうから確認した。
昨年、9月29日の労災にあった日からかれこれ10ヶ月近く経っている。
これは紛れもない労災隠しって事で、被害者も当紙も「こんな悪質な労災隠しを放っておけない」として、また再びアテナ社と派遣屋アンツの偽装請負・二重派遣、そして労災隠しについて徹底攻撃することに決定したわけだ。
先日より、アテナ社の渡辺剛彦代表取締役に対して、アテナ社とアンツの労働安全衛生法違反から労災隠しに至るまでの違法行為について、経営者としての正義を問う手紙を、被害男性が通知した。さらにアテナ社に通知到達の確認や渡辺代表の労災隠しについての真意を問う電話を入れた。
それらの結果については明日報ずる予定である。(アテナ渡辺剛彦代表は手紙の内容を確認している)