(敬天新聞9月号)
今年夏から「敬天千里眼情報」にて追求している事案がある。タイトルは「マルチ企業の背後に潜み大儲けの傍ら、NTTドコモと事業提携を進めるフレパー・ネットワークスの正体とは」である。先ず、同事案で指すマルチ企業とは、二年程前から仮想空間サービス「X-i(エクシングワールド)」のプレメンバーを募っている、ビズインターナショナル(さいたま市)のことである。
ビズ社の代表である石原茂男の説明によれば、インターネット上の仮想空間(現実の都市を忠実に再現)の土地を優先的に所得できるというのが、最大の売り文句のようだ。その為には、約四十万円を支払わなければいけない。しかし、プレメンバーには更なる特典が用意されている。それが、ビズ社との代理店契約であり、寧ろ、これこそがメインであるといってよい。
四十万円を支払いビズ社代理店となった契約者は、別の人物を勧誘し契約を締結すると、多額の報酬が得られるという仕組みである。
仮想空間内での土地所得の優先権利は、飽くまでも商材の一つであり、ビズ社の事業実態は単なるマルチ商法(連鎖販売取引)でしかないのである。マルチの行き着く先は犯罪であるネズミ講(無限連鎖講)であることは言うまでもない。
既にビズ社にも、その兆候が現れ始めている。本年四月、宮城県が消費生活条例に基づきビズ社の社名を公表し、行政処分の対象として検討していることが判明した。更に、国民生活センターのまとめとして、強引な勧誘や威圧的に契約を強要された等と、約六百三十件の相談があったと、重ねて報じられたのだ。この先、国民生活センターへの相談は急増するのは間違いなく、宮城県同様に社名公表による注意喚起に踏み切る自治体も増えるに違いない。
ビズ社が口にする「マルチ商法は違法ではない」という言い訳は、法解釈でいうならその通りだ。尤も、本紙の見解では、真っ当なマルチ業者など存在しないし、人づてに聞く儲け話の殆どが嘘であると、この手の悪徳業者を散々叩き捲った経験から断言できる。少なくとも、ビズ社と同社代理店による消費者を騙し陥れる契約手法は、既に特定商取引法に抵触している事実には言い訳が通らない状況だ。
結局、マルチがネズミ講へと変化する途中で、事実上の崩壊が始まったといえる。通常、マルチの仕組みを組成し事業化した者、今回はビズ社がそれに該当する訳だが、それが収益の大半を得ることになる。しかし、本件事案に限っては通常のマルチ商法とは仕組みが異なっており、特に収益を巧妙に処理する方法などは、これからマルチを立ち上げる悪党にとって、お手本になるような手口である。
危ない橋を渡る者(ビズ社)が、より多くの利益を得るはずが、本件事案においては、怪しいマルチを展開するビズ社とは一定の距離をおきもっぱら、遠まきに眺めている者が、最大の利益を受けているのだ。
それが、フレパー・ネットワークス(港区虎ノ門=宮之内誠人代表)である。フレパー社は、電気通信事業者としては新興企業ではあるが、最近ではNTTドコモとの事業提携を検討することで基本合意がなされるなど、今後に急成長が見込める優良企業である。
ただし、フレパー社の事業が好転したのは、この一〜二年のことで、それまでは業績不振で四苦八苦していた。そんな将来性の展望に欠けるフレパー社の浮上の切っ掛けとなったのがビズ社であり、同社が全国の消費者から掻き集めたマルチ収益が、フレパー社の血肉となったのである。
その仕組みは、本年六月に一般公開を予定(既に延期決定)していた仮想空間サービス「X-i」を安定稼動させるには、最低でも千台規模のサーバーシステムが必要であるということから、そのサーバーシステムをフレパー社から購入するというものだった。
つまりは、特定商取引法に抵触していると見なされているビズ社のマルチ商法によって集められた金銭は、本体の仮想空間サービスの完成以前に、サーバー購入費に充てられたのである。当時のフレパー社の販売実績をみると、この取引が業績の大半を占めていたことが解かる。
以前、フレパー社に対しビズ社との取引関係を問い質したときには「通常のビジネス行為」といった想定通りの姿勢を崩さなかった。ビズ社のマルチ商法に問題があり、その収益に犯罪性があろうと、フレパー社にしてみれば求めに応じて製品(サーバー)を売ったに過ぎないということらしい。
今後、ビズ社の勧誘行為が社会問題化することは必然で、当局の捜査対象となる可能性も少なくはない。仮に、ビズ社が掻き集めた銭が犯罪収益として認定され、其れを原資としたものがフレパー社に還流した事実があろうと、同社は事業収益としてシラを切るつもりの様だ。
悪意と犯意を以って人様を騙す悪党は、掠め取った銭はけして吐き出さない。しかし、本事案は敢えて表に出るサーバー購入を実行しているのがミソである。結果的に、フレパー社は企業の体裁を保てる業績を残すことができ、NTTドコモと交渉のテーブルに着く資格を得るまでになったのである。
何れにせよ、ビズ社はフレパー社の業績を高める為に、危ない橋を渡り銭集めと銭の運び屋に徹し、有時にはその身を犠牲にする覚悟があるようだ。ある意味、任侠界も舌を巻く立派な犠牲的精神である。
さて、優良企業の看板を手に入れたフレパー社は、更なる高みへと歩を進めている。八月十八日、東証二部上場企業の潟eークスグループが、大規模な第三者割当による新株発行を発表した。割当先はフレパー社と、その関連企業が大半を占めている。
割当分を全て行使した場合、フレパー社(関連企業持分含め)は筆頭株主に躍り出ることになる。次々と仕掛けてくるフレパー社からは、一時たりとも目を離せなくなった。
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