社主の独り言（辛口）

(敬天新聞７月号)

▼埼玉県警の刑事が越権行為と思えるような荒技に出た。被疑者でも被告でもない者の通帳を覗き、そこに振り込んでいる者にわざわざ「脅されたから振り込んでいるのではないのか」と電話しているという。 　恐喝などで逮捕された者に対して家宅捜索した後、出て来た通帳や本人の携帯電話の登録者に別件逮捕を求めて電話を入れたり訪ねたりする事はよくある。これとて、その事件に対する聴き取り、裏取りならともかく、別件で聞き回ることは違法とまではいかなくとも、行き過ぎではあるような気がするのだが。 　この場合は、まだその事件で逮捕されているから、その時点で世間は逮捕されたから悪い人という先入観を持っているし、余罪が出てくることにある種快感を持っている所があるから、世間の後押しもある。 　しかし守秘義務をもたない一般の人ならともかく、半公共的な信頼を持ち、多くのプライバシーを預っている金融機関、それも大手になればなる程その責任は重くなるはずである。 　今回はそれが被告や被疑者の通帳ではなく、全く事件に関係ないにも拘らず、通帳の中身を刑事に見せていたのである。余りにも軽率ではないか。ただ刑事訴訟法の百九十七条の二項に「捜査については公務所または公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」とある。 　その捜査というのが曲者である。当局が捜査と言えば全て捜査になるだろうし、許可書がなければ個人的なことで「捜査」と言って、必要な事項を知ることも可能だ。それには提出する側もプライバシーを預っている責任を強く自覚して欲しいものだ。 　その刑事が果たして所属する署の上司（警部以上の資格者）が許可した書類を所持し、その時担当した銀行側責任者に提示したのかどうか（当然、日付を特定した副本が残っていなければならない）。 　そうであるなら、それはそれで銀行側には非はない訳で、そこの所をハッキリして貰いたい。もし言葉だけでの証明で見せたのなら完全な銀行側の落ち度となる。 　警察側も許可を出せる立場の人間がまだ若ければ多少の冒険はするだろう。だが見識のある年齢、立場になればそう安々と反撃されるようなリスクは犯さない。どう考えても刑事の勇み足としか思えない。高い点数を取りたかったのだろう。この気合は買おう。 　社会を守る為に悪に敢然と立ち向かう勇気は警察に最も必要な要素の一つだろう。だが日本は罪刑法定主義である。今ある法律に則って、それを現時点で犯しているかどうか、が問われる事であって、それを調べる為に自らが法を犯して捜査をするのは、違法捜査として却下されるだろう。 　また越権行為は本人の驕りから出るものであるが、周囲や相手にも迷惑を及ぼしている事を知るべきである。今の所、銀行側が通帳コピーを見せた時の詳細がよく分らないので調査中であるが、こんな事が日常、平然と行われているのであれば、恐ろしい事である。 　奇しくも、今、足利事件の無罪を前提とした再審理が始まった。警察の捜査の手法について問われている。私自身は間違いや行き過ぎには猛省を促したいが、この事が切欠で臆病になったり、捜査に支障を来たして貰っては困ると思っている。やはり凶悪犯罪には毅然として立ち向かって欲しい。 　社会の安全を守る、犯罪を防ぐ、犯人を捕えるという役目は警察にしか出来ないことである。社会も警察に対する期待は大きい。だからこそ規律や法律に対する認識や、倫理観は人一倍持って欲しいのである。

▼私の人生も鮭の遡上時期に差し掛かったのか、何かとふる里のことが気になる。生まれ故郷の川から誰が教えたわけでもないのに一目散に下流へ向かい、あの広い太平洋を一周してまた生まれ故郷へ帰ってくる。 　途中ほとんどが艱難辛苦に押し潰されたり、天敵や巨大生物に捕食されたり、の困難から逃れた者だけが辿り着く僅かな命。それだけに逞しさは一入だろう。 　とロマンチックな話からふる里論に入ったが、今日の話は全く正反対と言っていい、魚の腐ったような生臭い話である。 　長崎県議会に二人の自己破産者がいるという。二人は自己破産をする前は会社の社長を務めていたと言うから当然会社は倒産したということだろう。会社を倒産させれば多くの人を不幸にする。従業員を始め、取引相手は多大な損害を被る。 　本来はそれらの債務を責任者として負い続けなければならないが、それを自己破産者（債務を負わなくていい）として裁判所に助けて貰うことで債権者から逃れる事であるわけだから、社会法人失格者、社会人失格者と公認烙印を押された様なものである。 　人の上に立つ事で失敗した者が、（履行しなければならない）義務を逃れ、（都合のいい）権利だけを主張し、公人である議員職を続けている事に、今の日本の病巣と議員の倫理観が垣間見える。 　県会議員は県民の負託を受け、県民の代弁者として行政に物を言ったり監視したりを主な仕事とする。当然、立場は清廉潔白であり健全でなければならない。自己破産者に法的にどれだけ制限がかかっているかは詳しくは知らない。 　だが、自分が自己破産した事によって、どれだけの人に迷惑を掛けたかというのは、多くの県民は知らなくとも自分自身は分っている筈だ。一般の貧者ならいい。貧者がサラ金を払えなくて自己破産することでの債務免除ならまだいい。 　議員に当選する位だから、地元ではそれなりの地位も力もあったのだろう。それだけに人の上に立つ者は、立ったその日から「地位が人を作る」というように、能力にプラスして自分を律する厳しさを持つ必要があるのである。 　日本が安定的に安泰なのは天皇陛下の御存在と、配慮のある言葉使い、怒りを直接ぶつけない、直ぐに忘れる国民性ではないかと常々思っているのだが、反面、日本人のこのようないい面を逆手に取って利用するのが首長や議員達ではないかという思いもある。 　勿論、イランや韓国みたいに国を挙げて体制を引っくり返そうとする暴動は日本には似合わないが、本人が状況を理解不足であったり、常識や倫理観に著しい欠如があれば、やはり教えてあげるしかない。 　利害関係が直接つながっている人は仕方がない。近所や縁戚や義理のある人も表面立って物は言えないだろう。だがこの際、一般県民はこの大間抜け議員にハッキリ物申す必要があろう。資格や資質がない者にはレッドカードを突きつけるべきだ。 　しかも、この議員のうちの一人は党の幹事長にこの春就任したという。受ける方も推薦する方も、どの面下げた行為なのだろうか。全く県民や党民を無視した行動に怒りが込み上げてくる。 　よく議員の辞職に対して「御本人が決められること」というコメントをいう議員がいる。本人の中にはこういう厚かましいのがいる、恥知らずがいる。同じ議員として勧告決議ぐらい出すべきだろう。 　ところが、この党というのが、私の大好きな天下の自民党であり、県政与党というから恐れ入る。ここに自民党の驕りがある。今、正に長年政権与党として国や県をリードしてきた自民党の腐敗や驕りに対して、国民、県民は怒っているにも拘らず、問われているそのものを当の自民党議員が理解していないのだ。それを指導する立場にある国会議員が裏で主導しての幹事長誕生というから開いた口が塞がらない。 　たまたま自民党長崎県連での出来事であるが、どの党であっても、どの県議であっても、自己破産者を幹事長にすべきでない。恥ずかしい事だ。幹事長の辞任どころか県議そのものを辞職すべきだ。 　だがこの不逞不遜な輩に立ち向かっている正義の志士がいる事は嬉しい。長崎県でこれまで幾つもの不正を暴いてきた「新しい長崎を創る会（中山洋二代表）」だ。当然、九州民族派の雄である正氣塾も活発に支援している。 　ふる里県の恥を全国に知らしめることは本意ではないが、この醜態は長崎県人としてではなく、日本人としても倫理が問われる看過できない出来事である。全国の民族派団体の力を借りてでも説得を続けなければならないだろう。