(敬天新聞6月号)
アクサ生命保険を相手に、大規模な生保不正契約を仕掛けた「信和総合リース」(千代田区神田錦町三−十五NTF竹橋ビル四階)の破産手続が粛々と進行しているなか、同社の分身会社ともいうべき「ライナインシュアランス」(信和総合リースと同住所)は、混迷の極みに陥っている様子だ。
信和総合リースの創業者である林正治(故人)は、余りにも無茶をし過ぎ、同社を救いようも無いブラック会社にしてしまった。勿論、莫大な犯罪収益を得るが為に、躊躇することなく脱法行為に手を染めたのだから、自業自得といえばそれまでだ。事件を起した当時の林正治にしてみれば、保険契約のアラを巧みについて、銭を稼ぐ手法はあみ出した。
その代償として、信和総合リースは捨てざるを得ないと、また自身への責任追求についても逃れられないと、多少の覚悟はあったに違いない。
そんな覚悟のなかで、林正治は生き残るが為の、後に復活するが為の保険をかけていたのだ。それが、ライナインシュアランスであり、その預かり役として嘗ての上司である武林隆を据えたのだ。
林正治は、多額の報酬で武林隆を懐に引き入れ、自分への忠誠心が本物だと確信したからこそ、最後の砦であるライナ社を武林隆に預けたに違いない。しかし、飼い慣らした筈の武林隆には、あっさりと裏切られることになり、林正治は失意と絶望のなか死んでいったのである。
一方の武林隆も、裏切りが成功するかどうかは、半信半疑であったであろう。だが、林正治が死亡した事で、ライナ社乗っ取りの最大の弊害が取り除かれ、それ以降は当然のように、社長の椅子に踏ん反り返っているのだ。記すのも不謹慎ではあるが、林正治の死を誰よりも願い、そして歓喜したのは、同人であったことは間違いない。
だが、ライナ社を我が物とした喜びは束の間でしかなかった。林正治は、信和総合リースの破綻を意識した頃から、自身が集めてきた保険契約(勿論、不正契約)を、ライナ社扱いの契約として偽装(付績契約)し始めたのである。
その結果、ライナ社は売上を飛躍的に伸ばせたが、無面接募集という明白な保険業法違反の契約を抱える羽目となり、以降その処理に追われることになる。
本紙前号でも報じたが、武林隆は無面接募集の揉み消しを焦るが余り幾多の墓穴を掘り、信和総合リースの不正解明に向いていた当局の目を、態々ライナ社に向わせてしまったのである。
武林隆は、ライナ社乗っ取りの成功に有頂天になり、引き継いだ負の遺産にまでは気がまわらなかった模様だ。
さて、林正治の怨念なり祟りを払拭したいのか、この五月から社名をライナインシュアランスから「スリー・エル」へと、前触れもなく変更した。社名を変えたところで、好転するような要素は何一つないのだが、既に手詰まり状態のなか、出来ることは悪名として世間に知れ渡っている社名を消し去る事しか思いつかなかったのであろう。
尚、新社名の由来が、L(ロング)・L(ライフ)・L(ラブ)で、スリー・エルと言う事らしいが(まぁ如何でもいいことだが、三流恋愛ドラマのタイトルのようだ)、折角の新社名も何れ近い内に、組織的詐欺の加担企業として、新聞社会面を賑わすことになるだろう。
ところで、手に入れたスリー・エルに必死にしがみ付いた末に、窮地に陥っている武林隆とは対照的に、盗る物盗って素早く撤収した、信和総合リース二代目社長の大山哲(大山会計代表)についてだが、こちらも社長就任時の不可解な動きの詳細が解ってきた。
紙面に掲載した「ご通知」なる書簡は、大山哲が信和総合リースの社長となった直後、同社顧客の個人・法人及び団体(計百三十件)に送付したものである。
この書簡を読む限り、新社長として会社の膿を出し切ろうとする、並々ならぬ決意が伺える。しかし、これが狡猾な脅しであると考えれば、その後の大山哲の行動と照らし合わせると、全てに於いて合点がいくのである。
そもそも、最後にある「当社としては正常業務の回復と円満な解決を望んでいます」とあるが、大山哲には端から会社の建て直しなど頭にはないのだ。その証拠に、僅か二週間あまりで同社を去っている。大山哲の目論みは、会社資産を調べ上げる為に、更には其の資産を動かすが為に必要な権限を得るが為に、社長に就任したに過ぎないのである。
自社顧客に対し、名義貸しが後に判明されれば刑事責任に問われることを示唆し、回答を暗に強要する。その後、連絡してきた顧客には当局への対応(契約は正当であった等)を指示し、その上で保険契約の解除を認めさせる。
顧客は事件に巻き込まれることなく、大山哲は管理していた保険契約を解除して払い戻しを受ける、或いは債権として第三者に譲渡する。これが、大山哲がいう「円満な解決」だとの推測が立つ訳だ。
斯様に、大山哲は鮮やかに整理をつけたかに見られるが、そこにも落とし穴があった。会社から放逐した林正治が死亡したことで、宙に浮いたスリー・エルの権利(発行済株式)さえもぶん捕ろうと欲を掻いてしまい、結果、破算管財人から疑惑をもたれるに至ってしまうのだ。何れにせよ、林正治が稼いだ犯罪収益が、最終的に流れ着いた先は、如何やら大山哲と武林隆の両名に絞られてきた模様だ。
さて、僅かな名義貸し料の為に犯罪に加担した、信和総合リース顧客の皆さんは、やはり犯罪は犯罪として裁かれるべきと考えます。特に、大山哲と「円満な解決」を安易に済ませた方々は、虚偽の供述に捜査妨害等の不法行為を重ねたことを、よくよくお忘れなきように。